料理に裁縫、仕事など、さまざまな場面で触れ合う機会の多いはさみ。2枚の刃でものを挟んで切る。それだけの単純な仕組みに思えるかもしれませんが、構造やその生産工程には、はさみの用途に合わせた繊細なこだわりがたくさん詰まっています。ここでは、プラスベトナム工場で作られているはさみの製造工程と、プラスがはさみにかけるこだわりや思いをご紹介したいと思います
はさみの製造工程とは
遠い昔は一つ一つ、職人の手で作られてきたはさみですが、現代の文具はさみの多くは機械化された工場ラインで作られています。そこで行われる工程は、大きく8つに分けることができます。
- プレス
- 熱処理
- 研磨
- 刃加工
- 成形
- 組み立て
- 検査・調整
- 梱包
では、まずはそれぞれの工程について解説します。
1プレス
材料となる鋼材を、プレス機を使って刃の形に打ち抜く工程です。鋼材の厚みなどによって打ち抜く力は変わりますが、だいたい50~100トンの力で打ち抜きます。打ち抜かれた刃型の部品は「ブレード」と呼ばれます。
2熱処理
ブレードの基になる「鋼」は、熱を加えることで性質を変化させることができます。
この工程は打ち抜いたブレードに熱を加え、「鋼」をはさみの機能に合った性質に変える工程で、「焼入れ」と「焼戻し」という処理を行います。まず約1,000度の高温で熱し(焼入れ)、その後急冷することで「鋼」に強度を持たせます。次に200度ほどの低温で再び熱を加える(焼戻し)ことで、粘りを持たせ、壊れにくくします。
3研磨
ブレード全体を研磨する工程です。打ち抜き、熱処理を行ったブレードには細かな傷やバリ(加工時に発生するギザギザ)があるため、研磨をすることで表面をなめらかにします。研磨には回転する砥石を利用し、鋼材の種類や研磨する面によって砥石や当て方を変えています。
4刃加工
研磨によってブレードに刃を作る工程です。3の研磨工程とは異なり、ブレード表面から側面にかけて角度を付けるようにして研磨を行います。刃の角度は鋭角であればあるほど、切れ味がよくなりますが、耐久性が下がるため、バランスのよい最適な角度になるように仕上げます。
5成形
加工が終わったブレードにグリップ(握り手)を付ける工程です。特殊な金型にブレードを入れ、その周りに樹脂を流し込み、グリップを成形します。
6組み立て
加工された左右のブレードを合わせ、カシメ(加締め)て組み付ける工程です。「ソリ」などのはさみの切れ味を高める加工も、この段階で行われます。
7検査(調整)
組み立てを終えて、完成したはさみを検査する工程です。これまでの機械工程とは異なり、人の手で切れ味や動きを確かめます。検査で切る素材ははさみの目的・種類に応じて変わります。この工程で基準から外れたものは、調整を行います。
8梱包
検査したものは最終的に梱包を行い、みなさまのもとへ出荷されます。
以上が、一般的なはさみができるまでの主な工程です。
多くの文具はさみが主に紙を切ることを前提に設計されていましたが、プラスの代表的なはさみ「フィットカットカーブ」シリーズは、家庭や職場にあるさまざまなものを切りやすくするために、刃にカーブを付けた新発想のはさみです。このカーブにより、はさみの刃を開いたときの角度が、刃元から刃先まで一定になるように設計されています。カーブ刃を忠実に作りだすために、研磨工程などでは機械に専用のプログラミングを施すなど、それぞれの商品に最適な設定を行い生産しています。
“手間がかかってもお客さまにより良いものを。” はさみを手にしたときに、少しでもプラスの商品作りへの思いを感じていただければと思います。