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はさコレ|HASA-KORE

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文具はさみの日
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INTERVIEW
はさコレ職業インタビュー:フラワーアーティスト
花を切る、花を生かす。
フラワーアーティスト・
Takuto Nishiさんに聞く、仕事とはさみの関係
インタビュー

ホテルやレストランで空間を彩る装花を手がけ、展示やライブパフォーマンスでも作品を発表しているフラワーアーティスト・Takuto Nishiさん。
花を美しく飾る仕事。けれどNishiさんの作品づくりは、完成形を考える前に、まず植物をよく見ることから始まります。 どんな形で生えているのか。どんなふうに伸びているのか。その植物から、自分は何を感じるのか。 そして、その制作のそばにいつもあるのが、はさみです。
花を切る。枝を落とす。形を整える。
その一つひとつの動きは、ただの作業ではありません。
植物の命を預かり、作品としてもう一度咲かせるために、はさみはどのような役割を果たしているのでしょうか。
Nishiさんに、花の仕事とはさみの関係について語っていただきました。

インタビュー

花との出会い

Nishiさんは、もともと臨床心理学を専門に学び、少年院の心理教官として働いていました。
人の心と深く向き合う仕事を続ける中で、ご自身も心身の調子を崩し、しばらく休職する時期があったといいます。
「次に自分には何ができるだろう」と考えていた頃、知り合いから花をもらったことが、植物の世界に目を向けるきっかけになりました。

「気分がすごく下がっていた時期だったんですけど、花が日光に向かって伸びていく姿が、当時の僕には衝撃的でした。植物の生きる姿に自分を重ねるようにして、作品をつくり始めたのがきっかけです」

世界が白黒に見えるように感じていた時期に、植物の繊細な色や、葉の表と裏で違う表情に心が動いたことも、大きな体験だったそうです。

「生け花は自己投影のようなものだと僕は捉えています。ネガティブな感情であっても、ポジティブな感情であっても、お花に投影していい。その自由度が、生け花の魅力だと思っています」

作品づくりで最初に考えるのは、決まった完成形ではなく、植物そのものの姿です。
「植物がどういう形で生えているか、どういう形で動いているか。そこから自分が何を受け取るかが、いつも一番の始まりです」
花を使って表現するということは、花を思いどおりに動かすことではなく、まず植物の声を聞くことなのかもしれません。

はさみの出番

華道や装花の現場で、はさみはどのように使われるのでしょうか。
Nishiさんは、「もう常に使います」と話します。

ホテルやレストランでの生け込み、撮影のための装花、作品制作。どの現場でも、植物は一本一本、形を見ながら扱われます。

「一本一本形を見ながら、きれいなところを切って、ここは落とした方がいいなというところを切る。植物をいける一回一回のすべてではさみを使っています」

花を切る。枝を切る。葉を落とす。
言葉にすると簡単ですが、その瞬間には、植物へのまなざしが込められています。

切るということ

生け花は、長く生きるはずだった植物の命を短くして、作品をつくる芸術でもあります。

だからこそNishiさんは、切った後の植物が、見る人の心の中で長く生き続けるように意識しているといいます。

「山でひっそりと咲いていたような植物が、いろんな人に見ていただける場所できれいに咲いている。見てくださる方々の心に長く残り続けるように、そこで生き続けられるように、ということはすごく意識しています」

はさみを入れることは、終わらせることではなく、別の場所でもう一度生かすこと。
Nishiさんの言葉からは、そんな道具との向き合い方が伝わってきます。

道具へのこだわり

Nishiさんが普段使っているのは、枝ものにも対応できる、刃先が長めの花ばさみです。
仕事では細い茎だけでなく、桜のような太い枝を扱うこともあります。

「太めの枝でもガツっと切ることができること。もちろん切れ味も大事です。あとは、手に馴染んだときにどう動いてくれるか。 僕にとっては少し重たい方がやりやすいです」

手に持ったときの重さ、刃先が届く感覚、力を入れたときの動き。そのすべてが、作品づくりのリズムにつながっています。

そんなNishiさんにとって忘れられないはさみがあります。それは、師匠から独立祝いのように贈られた、京都の職人がつくった名前入りのはさみです。

生け花の世界に入ったばかりの頃、Nishiさんは師匠から古いはさみをもらい、何度も練習しながら、弟子として現場の作業を続けていました。

そして独立する少し前、師匠が「いつも頑張っているから」とプレゼントしてくれたのが、そのはさみでした。

「職人さんが丹精込めてつくっているはさみを手にしたときに、こんなに違うんだと思いました。仕事をする上で一番使う道具なので、ここには一番こだわり続けたいと思わされた瞬間でした。」

はさみは、ただ便利なものではなく、使い続けることで自分の手に馴染み、誰かの思い出や、仕事への覚悟まで持つものになっていきました。

切る音と手つき

大切なはさみだからこそ、手入れも欠かせません。

「最初の頃は、道具を手入れする意識があまり高くありませんでした。気がついたら植物がはさみに引っかかって、うまくスパン、スパンと切れないことがありました」

日常的な手入れはもちろん、職人に研いでもらい、欠けたところも直してもらうと、切れ味はまったく変わる。その違いは、作品づくりのスピードやリズムにも影響します。

「はさみを入れながら、その音と一緒に自分もリズムに乗ってくる感覚があります。これは、はさみをきれいに手入れしていないとできない感覚なのではないかなと思います」

スパン、スパン。
その音は、ただの作業音ではなく、作品が立ち上がっていく音なのかもしれません。

Nishiさんは、音楽家やダンサーと一緒に、植物を使ったライブパフォーマンスを行うこともあります。

「パフォーマンス自体が一つのアートとしてあるので、はさみで何かを切るということも表現になります。適当にガシャガシャ切っていたら、丁寧に仕事をしているようには見えないと思うんです。一つひとつの手の入れ方で、どう伝わるかはすごく意識しています」

はさみを使う姿そのものが、作品になっていくのです。

美しいところを残す

最後に、Nishiさんは、はさみを使う面白さについてこう話してくれました。

「小さいときは、文具用のはさみをよく使うと思うんですけど、最初はただ作業をするためのものというイメージが強いかもしれません。でも、お花で作品をつくったり、切り絵をしたり、何かを切り取ることで、自分が一番美しいと思うものを残していける。それが面白いところだと思います」

いらない部分を切ることで、残したい形が見えてくる。違うものと違うものを切り取り、組み合わせることで、新しいものが生まれる。

はさみは、ただものを小さくする道具ではありません。
自分が「きれいだな」「面白いな」と思ったものを見つけ、形にするための道具でもあります。

Nishiさんの作品づくりを通して見えてきたのは、はさみが持つ、そんな静かで大きな力でした。

▼Takuto Nishiさんインタビューの様子はこちら